咀嚼タン

■咀嚼タン

 

     近年,食事の軟食化のため、咀嚼回数の低下が問題になっています。成長期の子供にとって咀嚼回数の低下は、顎骨の発育不良として歯列不正の大きな原因となると言われています。そこで我々は、実際の咀嚼をゲーム内に用いることで咀嚼回数の増加を目的としたシリアスゲームを開発しました。  咀嚼タンは,咀嚼をコンセプトにしたシリアスゲームです。体験者はヘッドセット型の咀嚼検出センサを装着し市販のガムを咀嚼します。咀嚼回数に応じて実世界のキャタピラ型戦車が前進するシステムです。2名で遊ぶことができ,相手より先にゴールを目指します。相手に勝つためには,相手より多くの咀嚼を行う必要があり,咀嚼回数の増加が期待される.厚生労働省の食生活指針によると「しっかり噛んでゆっくり食べる」ことが取り上げられており,しっかり噛むことが求められています。本システムでは小さな咀嚼は認識されず大きい咀嚼のみ認識され指針に沿った咀嚼方法を学習することができます。

 

 

 咀嚼タンは、体験者の咀嚼を検出するChewing DETECTOR,咀嚼情報をPCとChewing TANKに送信するChewing DEVICE,実際に動作するキャタピラ型戦車であるChewing TANKから構成されています。

 

Q.咀嚼する意味は?

 咀嚼は単に食物をかみ砕くだけではなく、口腔内を刺激することで各臓器の消化液の分泌を促進する働きがあるといわれています。一回の食事の咀嚼回数は約1,500回が理想とされています。しかし、実際は620回程度と咀嚼回数が年々減少しています。子供たちに人気のメニュー(カレーライスやハンバーグなど)は柔らかく咀嚼をほとんどおこなうことなく飲み込んでいるのが現状です。本システムにおいて、咀嚼をトリガーに設定したゲームを開発することで咀嚼回数の増加を目指しています。

Q.どのようにして咀嚼を検出しているのですか?

 咀嚼の検出は、筋電位を使えば容易に咀嚼を検出することは可能ですが、我々は咀嚼時の皮膚表面上の起伏を非接触で検出することに挑戦しています。
 我々は,咀嚼時に起伏する咬筋に注目しています。咬筋と,内側翼突筋,外側翼突筋が交差する地点が咀嚼時に最も起伏することを予備実験において確認し計測ポイントと設定しています。

 咬筋の測定ポイントの検出をおこなうために咬筋の両側に反射型光センサ(フォトリフレクタ)を配置し,センサと皮膚表面との距離を無接触で計測しています。ゲーム体験中での装着を想定すると予想以上に体験者が激しく動き、計測ポイントが正しく測定できない可能性があります。そこで、1個のセンサで計測するのではなく、上下左右1cm間隔で片側16個、両側で32個、配置することでこの問題を解決しています。

 左右にセンサを配置することにより,左右どちらの歯で咀嚼を行ったかの計測が可能であり,片側だけの歯で咀嚼を行う偏咀嚼の計測も行うことが可能です。