咀嚼タン:咀嚼をトリガーに設定したシリアスゲームの開発
Chewing.jpg咀嚼(そしゃく)
 咀嚼とは、摂取した食物を歯で噛み、粉砕すること。


Chewing.jpgはじめに
 近年,食事の軟食化のため、咀嚼回数の低下が問題になっています。成長期の子供にとって咀嚼回数の低下は、顎骨の発育不良として歯列不正の大きな原因となると言われています。
 そこで我々は,実際の咀嚼をゲーム内に用いることで咀嚼回数の増加を目的としたシリアスゲームを開発を行っています。咀嚼タンは,実際にガムを摂取し咀嚼することで現実の戦車が前進する戦車です。相手に勝つためには、多くの咀嚼を行う必要があり,楽しみながら咀嚼回数を増加させることが期待できます。

Chewing.jpg遊び方
咀嚼タンは、咀嚼して前進するタンクの意味です。ガムを噛むことで前進します。2人で遊ぶことができ、相手より先にゴールを目指します。相手に勝つためには、より多くの咀嚼をおこなう必要があります。  小さく早い咀嚼を行うのではなく、リズム良く大きな咀嚼をおこなうことでより前進します。
Chewing06.jpg

Chewing.jpg展示風景
Chewing07.jpg

Chewing.jpg動画

Chewing.jpgQ&A
Q1: どうしてこれを考えたのですか?
 我々は、これまで偏食克服を目的にしたシリアスゲームの開発をおこなってきています。これは、実際の飲食物の摂取をゲームコンテンツ内のクリア条件に設定することで、ゲームをクリアすることができます。ゲーム内で「あの鬼もモンスターを倒すには豆を食べないと︕」と子供たちに指示すると、ゲームをクリアしたいために、嫌いな豆やトマトジュースを飲食する可能性を見出すことができました。
 例えば、馬の前にニンジンをぶら下げておくと、馬はニンジンを食べたくて前に進みます。同じように、子供たちの前にニンジンをぶら下げていくと食べたくありません。しかし、ゲームをぶら下げておくと、子供たちはゲームをします。そのクリア条件に、飲食物の摂取を設定することで偏食を克服する可能性があります。

Chewing01.jpg

 咀嚼タンでは、「咀嚼」に注目し「咀嚼回数」の増加をゲームを用いて楽しみながら行うことを目指しています。

 この作品は、普通のゲームではなく、シリアスゲームです。シリアスゲームはゲームプレイ過程で得られた経験が実際になんらかの役に立つことを目的に制作されています。従来のテレビゲームで得るものはありません。単なる時間の浪費でしかありません。短期間でゲームおこない「気分をスカッとリフレッシュ」できるものであれば良いのかもしれませんが、最近のゲームはクリアするまで何百時間という時間を浪費します。ゲームを徹夜でプレイして、次の日の会社、大学で寝不足が原因でなんらかの支障が生じています。
 ゲームプレイして何が残りますか?経験ですか?知識ですか?あなた達は、何回RPGで世界を救っていますか?現実に、それだけの回数「世界を救う英雄体験」をすれば人格的にも精神的にもしっかりした人間に成長するはずです。しかし、実際はどうでしょうか?「ゲームをプレイして何が得られますか?」
 そういった従来型のゲームとは異なり、咀嚼タンは咀嚼回数を増加させる可能性をもたらすことができるシリアスゲームを今回は提案しています。

Q2: 咀嚼する意味は?
 咀嚼は単に食物をかみ砕くだけではなく、口腔内を刺激することにより各臓器の消化液の分泌を促進しする働きがあるといわれております。一回の食事の咀嚼回数は約1,500回が理想とされています。しかし、実際は620回程度と咀嚼回数が年々減少しています。 子供達に人気のメニュー(カレーライス、ハンバーグ、スパゲッティなど)は、柔らかく、咀嚼をほとんどすることなく飲み込んでいるのが現状です。
 本システムにおいて、咀嚼することをトリガーとすることで、ゲームを通じて嚼回数の増加を目指しています。

Q3: どのようにして咀嚼を検出しているのですか?
 咀嚼の検出は、咀嚼時の皮膚表面上の起伏を非接触で検出しています。
 我々は,咀嚼時に起伏する咬筋に注目しています。咬筋と,内側翼突筋,外側翼突筋が交差する地点が咀嚼時に最も起伏することを予備実験において確認し計測ポイントと設定しています。
 
Chewing02.jpg
 咬筋の測定ポイントの検出をおこなうために咬筋の両側に反射型光センサ(フォトリフレクタ)を配置し,センサと皮膚表面との距離を無接触で計測しています。ゲーム体験中での装着を想定すると予想以上に体験者が激しく動き、計測ポイントが正しく測定できない可能性があります。そこで、1個のセンサで計測するのではなく、上下左右1cm間隔で片側16個、両側で32個、配置することでこの問題を解決しています。
Chewing03.jpg

 下図はガムを意識的に両側の歯,左側の歯,右側の歯で咀嚼したときの理想的な計測の一例を示します。距離データに周期性が見られ,また,左右どちらかの歯で咀嚼したのかも計測することが可能です。
Chewing04.jpg
 
Q6 なにを噛んでいるのですか?
 特殊なガムではなく、ロッテや明治製菓さんなどの市販されているガムを使用しています。

Q7 衛生面は大丈夫ですか??
 衛生面には気を使っており、プレイを行う前にはかならず消毒液で手を消毒していただきプレイを行なっております。また、プレイ時には、体験者のアレルギー保持を確認してから体験を行っていただいています。
Chewing05.jpg
 


Q8 本当に咀嚼回数の改善ができるのですか?
 必ず偏食咀嚼回数が改善できるわけではないが、ゲームを通じて咀嚼や噛むことについての「きっかけ作り」が可能ではないかと考えています。また、センサが両側に配置しているので偏咀嚼を検出し偏咀嚼を自覚するゲームシステムも作ることができるのではないかと考えています。偏咀嚼とは、どちらか片方の歯だけで咀嚼する症状のことで放置しておくと、全身のゆがみや頭痛などを引き起こすことがあるといわれています。この偏咀嚼を検出し、左の歯で噛むと左のモータを回転、右の歯で噛むと右のモータを回転させる仕組みを実装します。まっすぐ前に前進するには左右均一に噛む必要があります。子供たちにこのシステムを体験させることにより、偏咀嚼を自覚させ、また改善させることも可能になると考えています。